JR横浜線・相模原駅から歩いて約16分。
西門商店街の一角にある「KEN’S BREWERY(ケンズブルワリー)」は、自家醸造ビールと全国のクラフトビールを8TAPで楽しめる、小さなブルワリー併設ビアバーです。

この店で何より面白いのが、その成り立ち。
オーナー兼ブルワーの沼田さんは、もともと商社やメーカーで営業職として長く働いてきた会社員。若い頃からビールが好きで、全国各地のクラフトビールを飲み歩くうちに、
「飲むだけではなく、自分でもビールを造ってみたい」
という思いが強くなり、50代後半で脱サラ。
醸造経験ゼロから勉強を始め、2022年に店を開業。そして2024年、ついに自家醸造ビールの提供をスタートしました。
平日のオープン直後に訪れると、この日は私が一番乗り。
ところが、まだ早い時間にもかかわらず、その後ぽつぽつとお客さんが来店。
朗らかで気さくな沼田さんと話しながら、今回は自家醸造の「さがみはラガー」「西門エール」「青い手IPA」の3杯を飲んできました。
ケンズブルワリーは2022年開業、2024年から自家醸造をスタート
ケンズブルワリーは2022年に創業。
当初から目標にしていたのが、自分自身でクラフトビールを造ることでした。
それまで長く営業職として働いてきた沼田さんに、ビール醸造の実務経験はなし。
会社員時代から全国各地のブルワリーやクラフトビール店を巡り、退職後は醸造所で働きながら実地で技術を学び、座学でも醸造について勉強。
その後、醸造設備や酒類製造免許を整え、2024年に自家醸造を開始しました。

自家醸造第1号となったのが、
「西門エール」
です。
つまり、
ビール好きの会社員
↓
全国各地のクラフトビールを飲み歩く
↓
50代後半で脱サラ
↓
ビアバーを開業
↓
一から醸造を学ぶ
↓
自分のブルワリーを始める
という流れ。
クラフトビールを趣味として楽しむ側から、本当に造る側へ。
この経歴を知ると、一杯のビールにも少し違った味わいを感じます。
なぜ相模原・西門商店街にブルワリーを?
ケンズブルワリーがあるのは、相模原市中央区の西門商店街。
JR相模原駅から南へ歩いた場所にある商店街です。

沼田さんがこの場所を選んだ背景には、西門の桜並木もあったそう。
桜を見ながら美味しいクラフトビールを飲みたい。
そんな思いもあったといいます。
そして、自家醸造ビールの名前を見ると、この店が地元を強く意識していることが分かります。
西門エール。
さがみはラガー。
青い手IPA。
どれも相模原や西門に由来する名前です。
特に「青い手IPA」の名前につながるのが、西門商店街にある岡本太郎のモニュメント《呼ぶ 赤い手・青い手》。
単に相模原でビールを造っているのではなく、
街そのものをビールの名前や物語に取り込んでいる。
ここがケンズブルワリーの面白いところです。
店内は12席。落ち着いて飲める小さなタップルーム
店内は木を基調とした落ち着いた雰囲気。
天井にも木材が使われ、白い壁とダークブラウンの家具でまとめられています。

席数は12席。
小規模なブルワリーですが、テーブル同士には比較的余裕があり、一人でも数人でも利用しやすい空間です。
平日のオープン直後に訪れたため、この日は私が一番乗り。
ところが、その後すぐに数名のお客さんが来店しました。
駅前の繁華街にあるわけではないのに、早い時間から人がやってくる。
地域で少しずつ定着している店なのだろうと感じます。
そして、何より印象に残ったのがオーナーの沼田さん。
とても朗らかで気さく。
ビールの話を聞きながら飲める距離感は、小さなブルワリーならではの楽しさです。
8TAP。訪問時は自家醸造3種+ゲスト5種
ケンズブルワリーのタップは8TAP。

訪問日のラインナップはこちらでした。
| No. | ビール | スタイル | ABV | 醸造所 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | さがみはラガー | Lager | 5.0% | KEN’S BREWERY |
| 2 | 西門エール | American Pale Ale | 5.0% | KEN’S BREWERY |
| 3 | 青い手IPA | American IPA | 6.7% | KEN’S BREWERY |
| 4 | うたたね | Dry Hopped Saison | 5.5% | 254Beer |
| 5 | Binky Rabbit | Oat Cream Coast IPA | 7.0% | Shared Brewery |
| 6 | アメスタ | American Stout | 6.5% | TKBrewing |
| 7 | スルガベイ インペリアルIPA | Double IPA | 8.5% | Baird Brewery |
| 8 | ゆるブル Wheat | Hazy Wheat IPA | 5.0% | 志賀高原ビール |
この日は、
自家醸造3TAP+ゲスト5TAP
という構成。
自家醸造だけに固執せず、他ブルワリーのビールも組み合わせているので、一軒でかなり幅広いスタイルを楽しめます。
一方、せっかくケンズブルワリーまで来たなら、やはり自家醸造を多く飲みたいところ。
今後、自家醸造の種類がさらに増えて8TAPの多くを占めるようになれば、ブルワリーとしての面白さはさらに増しそうです。
レギュラー270ml、ラージ480ml。4種飲み比べもあり
ビールは2サイズ。
レギュラー:270ml
ラージ:480ml
です。
訪問時の自家醸造ビールの価格は、
さがみはラガー
レギュラー 750円
ラージ 1,100円
西門エール
レギュラー 750円
ラージ 1,100円
青い手IPA
レギュラー 800円
ラージ 1,150円
でした。
そして、初訪問ならかなりありがたいのが、
飲み比べセット 1,600円
8TAPの中から好きな4種類を選び、140ml×4杯で楽しめます。
クラフトビール店で8種類も並んでいると、
「あれも飲みたい」
「こっちも気になる」
となりがち。
好きな4種類を自由に選べるのはかなり使いやすい。
次回来るなら、このビアフライトを最大限活用したいところです。
① さがみはラガー|甘みを感じる、まろやかなラガー
まずは自家醸造の、「さがみはラガー」Lager/ABV5.0%。

今回飲んだ3杯の中では、これが一番好きでした。
苦味はかなり控えめ。
むしろ印象に残るのは、ほんのりと感じる甘みです。
その甘さが尖ることなく、飲み口全体をまろやかにしています。
ラガーというと、
「キレ」
「爽快感」
「喉越し」
を前面に出すものを想像しがちですが、こちらはもう少し柔らかい。
優しい甘み、控えめな苦味、丸みのある飲み口。
クラフトビールにあまり慣れていない人にも勧めやすい一杯だと思います。
個人的には、この日のベスト。
② 西門エール|ケンズブルワリー自家醸造第1号
続いて、「西門エール」American Pale Ale/ABV5.0%。

ケンズブルワリーにとって特別な一杯です。
2024年に誕生した自家醸造第1号。
名前には、店を構える西門商店街への思いが込められています。
飲んでみると、ほんのりとした柑橘系のアロマ。
そこにホップ由来の苦味があります。
ただし、香りも苦味も強烈ではありません。
ホップを前面に押し出す最近のペールエールとは少し違い、全体的にはかなり飲みやすい。
柑橘感と苦味をほどよく楽しめる、素直なアメリカンペールエール。
ブルワリーの原点という意味でも、初めて訪れたなら飲んでおきたい一杯です。
③ 青い手IPA|グレープフルーツを通り越すほどの苦味
3杯目は、「青い手IPA」American IPA/ABV6.7%/IBU70。

これは前の2杯から一気にキャラクターが変わります。
飲んだ瞬間、
苦い。かなり苦い。
グレープフルーツの皮を思わせる苦味……を通り越し、個人的には少しエグみを感じるほど強烈な苦さ。
さらに少々グラッシーなニュアンスも感じます。
最近はHazy IPAのように、苦味を抑えてジューシーさや甘さを前面に出すIPAも増えています。
こちらは、その真逆。
IBU70。苦味をしっかり味わうアメリカンIPAです。
「IPAはやっぱり苦くないと」
という人にはかなり刺さりそう。
そして、この「青い手」という名前。
西門商店街にある岡本太郎の《呼ぶ 赤い手・青い手》を知ってから飲むと、さらに面白い一杯です。
自家醸造3杯のキャラクターがまったく違う
今回飲んだ3種類を並べると、
さがみはラガー
→ 甘みとまろやかさ
西門エール
→ 柑橘系のアロマとほどよい苦味
青い手IPA
→ IBU70の強烈な苦味
と、かなり方向性が違います。
これが面白い。
自家醸造を始めてまだ歴史の浅いブルワリーですが、同じようなタイプばかりを造っているわけではありません。
ラガーからペールエール、しっかり苦いIPAまで。
「次はどんなスタイルを造るんだろう?」
と思わせる幅があります。
フードは地元・高座豚を使ったメニューも
今回はビールだけでしたが、フードメニューもチェック。

軽いおつまみから、神奈川県のブランド豚**「高座豚」**を使った料理まで揃っています。
訪問時には、
- ポテトサラダ 380円
- じゃがバター 380円
- サクサクチーズ 380円
- ミックスナッツ 480円
- チーズ盛り合わせ 780円
- バゲット3枚 250円
- ホットドッグ 600円
- 高座豚生ハム 880円
- 高座豚生ハム&チーズ 780円
- 高座豚ソーセージ盛り合わせ 880円
- 高座豚ベーコンステーキ 1,280円
など。
特に目を引くのが高座豚ベーコンステーキ。
相模原のブルワリーで、神奈川県のブランド豚と地元を意識したクラフトビールを合わせる。
この組み合わせは次回来たら試してみたい。
ソフトドリンクには手作りレモネード 580円もありました。
良かったところ|「地元ブルワリー」という言葉がよく似合う
この店で一番良かったのは、
相模原で造っているだけでなく、店全体が相模原を向いていること。
西門エール。
さがみはラガー。
青い手IPA。
高座豚。
西門商店街。
岡本太郎の《赤い手・青い手》。
地元との接点が随所にあります。
全国どこへ移しても成立するクラフトビールバーではなく、
「この街だから、この店がある」
という感覚が強い。
そして、気さくなオーナー兼ブルワー本人からビールの話を聞きながら飲める。
これも小規模ブルワリーを巡る醍醐味です。
気になったところ|訪問時の自家醸造は3TAP
唯一、もう少し欲しかったのが自家醸造ビールの数。
訪問時は8TAPのうち自家醸造3種類、ゲスト5種類でした。
もちろんゲストビールが多いことで、さまざまなブルワリーを楽しめるメリットもあります。
ただ、
「ケンズブルワリーまで来たからには、ケンズを飲みたい」
という気持ちもある。
次に来るなら、自家醸造のラインナップがさらに充実したタイミングを狙いたい。
そして4種飲み比べセットを使い、
4杯全部ケンズブルワリー。
これをやってみたいと思います。
ケンズブルワリーはこんな人におすすめ
- 相模原でクラフトビールを飲みたい
- 小規模なブルワリー巡りが好き
- ブルワー本人と話しながら飲みたい
- ラガーからIPAまで幅広く飲みたい
- ビアフライトで複数種類を試したい
- 地元食材と地元ビールを楽しみたい
- 西門商店街や岡本太郎作品も一緒に巡りたい
相模原駅からは少し歩きます。
ただ、クラフトビール好きなら、その15~16分を歩いて訪れる価値のある一軒です。

店舗情報|KEN’S BREWERY(ケンズブルワリー)
店名
KEN’S BREWERY
ケンズブルワリー
住所
〒252-0232
神奈川県相模原市中央区矢部1-4-11 プラザサイトウ1F
最寄駅
JR横浜線「相模原駅」
アクセス
相模原駅南口から徒歩約15分
実際に歩いて約16分
電話番号
080-8690-9688
営業時間
月・火 18:00~23:00
金 17:00~23:00
土・日・祝 13:00~23:00
ラストオーダー22:30
定休日
水曜日・木曜日・毎月最終日曜日
席数
12席
TAP数
8TAP
訪問時
自家醸造3TAP+ゲスト5TAP
ビールサイズ
レギュラー:270ml
ラージ:480ml
飲み比べセット
140ml×4種類
1,600円
※訪問時
支払い
クレジットカード・QRコード決済対応
禁煙・喫煙
全席禁煙
※営業時間、価格、TAP構成などは変更される場合があります。訪問前に最新情報をご確認ください。
まとめ|50代後半から始まった「相模原のビール」
ケンズブルワリーで一番印象に残ったのは、単純にビールの味だけではありません。
会社員として長く働きながら、全国のクラフトビールを飲み歩く。
その趣味が高じて、
「自分でも造りたい」
と思う。
50代後半で会社員生活からクラフトビールの世界へ飛び込み、一から醸造を学ぶ。
2022年に店を開き、2024年には自分のビールを完成させる。
そして生まれたビールに、
西門。
相模原。
青い手。
と、店を構えた街の名前を付ける。
今回一番好きだった「さがみはラガー」は、苦味を抑え、ほんのりとした甘みを感じる、とてもまろやかな一杯。
西門エールは、柑橘系の香りと苦味をほどよく楽しめるペールエール。
青い手IPAは、その2杯から一転してIBU70の強烈な苦味。
同じブルワリーなのに3杯の方向性がまったく違う。
まだ自家醸造の歴史は始まったばかり。
だからこそ、
「これからどんな相模原のビールが増えていくのか」
を追いかける楽しみがあります。
次に訪れるなら、自家醸造ビールがずらっとTAPを占める日に。
4種のビアフライトを使って、ケンズブルワリーの現在地をもう一度飲み比べてみたいと思います。



コメント